たかゆう日記

本が好きです。読んだ本を中心に、映画・マンガ・テレビなどについても言及できればと思います。

Netflix版『デビルマン』は伝説を塗り替えた傑作だった【ネタばれあり】

永井豪『デビルマン』は、伝説のマンガ作品だ。

人間界が悪魔に支配され、シビアで暴力があふれる世界を描く。そして、ヒロインは悲劇にみまわれる。

その原作を完全に再現するという名目で制作されたのが、「DEVILMAN crybaby(デビルマン・クライベイビー)」だ。Netflixのオリジナルアニメとなる。

『デビルマン』は1972年にアニメ化されている。アニメ版は原作と乖離した設定で、ヒーロー的側面を持っていた。デビルチョップ、デビルキックなどの必殺技があり、子どもも楽しめる変身ヒーローだった。

さて、Netflix版はどうだったのか?

「DEVILMAN crybaby」あらすじを3行でまとめると…

  1. 不動明は気弱な青年
  2. そこに幼馴染みの飛鳥涼が現れ、不動明はデビルマンとして覚醒する
  3. 人間界を襲う悪魔と、デビルマンの戦いが始まる

1話目からエログロだらけ

結論から言うと、Netflix版『デビルマン』は、すばらしかった。原作の要素であるバイオレンスとエロを描き切ってくれた。

想像をいろいろな意味で超えてきたたし、観てるこちらもウゲェとなる場面がたくさんあったし、そもそもエログロを描くべき必然性も感じられた。

1話目から振り返ってみる。

主人公の不動明は心優しい男子。そこに、飛鳥了がさっそうと現れる。「おまえに用ができた」と。

2人は、ドラッグパーティーへ潜入する。このパーティー、まぁ破廉恥で、エロにまみれてる。

そして飛鳥了は、パーティーにいる人々を割れたビンで刺しまくる。グッサグッサと手当たり次第。目的は悪魔召喚だ。

不動明が悪魔と合体し、デビルマンの誕生へといたる。

1話目からアクセル全開だった。

暴力描写はうまく見せていて、カラフルになったり、ウネウネしたりと、スタイリッシュさもありつつ酩酊感を演出する。このあたりは、湯浅政明監督の真骨頂。

この1話で、本作『DEVILMAN crybaby』が並みの作品とは一線を画すことが分かる。

宿敵シレーヌの登場回がとにかく泣ける

物語は2話目以降、不動明と飛鳥了が悪魔を探し出し対決するという構造になっていく。バディものだ。

明はデビルマンとしての戦闘力を武器に、了は知恵を武器に、悪魔ハンターとなる。

このパートは人間界に潜む異形のものたちを探し出す、というテイストでおもしろかった。探偵ものっぽい。

そして神回として推したいのが、デビルマンの宿敵シレーヌとの対決回だ。

とにかく泣ける。

シレーヌは、不動明と融合している悪魔アモンに恋い焦がれる。シレーヌの艶めかしい欲情あふれる求愛は、魅惑的に映る。

そしてもう1人、キーを握るのが悪魔カイムだ。カイムはシレーヌのことを愛している。この感情はものすごく重要で、カイムには犠牲の精神がある、つまりは悪魔であろうとも他者の立場で物事を考え、そして愛情を示せることを知らしめている。

現にカイムは、シレーヌにすべてを捧げる。デビルマンとの戦いで傷ついたシレーヌに対して、カイムは合体を提案する。悪魔同士、合体することで能力は増すのだが、シレーヌは瀕死状態。たとえ2人が合体しても、いずれは命を失うことになるのだ。

シレーヌがカイムに疑問を投げかける。なぜそうまでして尽くすのか、と。シレーヌの血まみれでボロボロの姿を見ながら、カイムは言う。

「シレーヌ、血まみれでもキミは美しい」

合体した2人とデビルマンの死闘の結末は、ぜひ実際に見てほしい。

ラストシーンの美しさに、僕は鳥肌が止まらなかった。

原作との相違点とは?

デビルマン原作に大筋は忠実ながらも、大胆な変更点はある。

不動明がデビルマンになる前に、さらに貧相な感じに。ここは違いが明確に出てよかった。クライベイビーだし。

ヒロインの美樹は、原作よりも完璧な女性になっている。しっかり者で、文武両道。原作は不動明が野性味を増したら、途端に好きになっていて媚び売ったりする。

第1話で不動明と美樹にからんでくるチンピラは、ラッパーに変更。声優はKEN THE 390や般若、YOUNG DAISなど現役ラッパーが務める。

ヒロインが殺戮される伝説の場面

物語は最終局面へ。悪魔の存在を全世界が知ることになり、人間が人間を信じられなくなる。あの人は悪魔ではないかと、だれもが疑う。魔女狩りをする世界になっていく。

そして不動明の彼女である美樹も標的にされてしまう。起こるのだ、殺戮が。おぞましいまでの殺戮が…。

原作『デビルマン』が伝説となったエピソード。もちろん美樹がどうなるかは事前に分かっている。それなのに、ツラくなり、受け止めきれなくなるほどの衝撃があった。

これまで物語を積み重ねてきたからこそ、感情移入していたからこそのインパクト。

美樹は、まっすぐな人物だ。陸上選手でもあり、成績優秀。だれがも憧れる存在。それだけに妬みを買うこともある。

ただの清廉潔白なキャラではなくて、彼女は芯の強さを持っている。 表層的ないい人になんか、興味はない。だけど深みのあるいいひとには、僕は感銘を受ける。ツラいことも知っている。だけど善なる行動をとれるのが、本作のヒロインだ。

この悪魔的世界で、美樹は光り輝く希望だった。醜悪な世界であればあるほど、美樹の崇高さが際立つ。美樹は希望だった。

その希望は、愚かな人間たちの無情な暴力によって、粉々にされる。

美樹の四肢は解体され、燃えさかる炎の中で美樹の顔のシルエットが浮かぶ。

デビルマンは叫ぶ。

「人間どもがぁぁ!!!」

視聴している僕らも、ただただ目撃するしかできない。非力さを呪い、世界の終焉を確信する。

美樹がいなくなった世界では、正義はもはや機能しない。

デビルマンの原作を完全アニメ化するには、美樹の場面を描くこととほぼ同一となる。もちろん飛鳥了と不動明の名場面もあるが、やはり美樹の場面が先立つだろう。そして湯浅監督はそれを見事に描き切った。

おすすめ度9☆☆☆☆☆☆☆☆☆★

とにかくアクセル全開でいくと、やっぱこういうスゴい作品ができるなぁと思った。規制が強く、それでも描かなければいけない題材であれば、Netflixでやる意味がある。まさにマンガ『デビルマン』は打ってつけだった。

もう、不動明と飛鳥涼、美樹、シレーヌ…それぞれの登場人物の名場面や過激場面が、目に焼き付いて離れない。

『DEVILMAN crybaby』は伝説を塗り替えた。